無慈悲な「ズンズン運動」施術。泣き叫んだ赤ちゃん!

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「体調が良くなるから」
「病気にかかりにくくなる」

「好奇心旺盛な子どもに育つように」
「アトピー性皮膚炎も治る」

「体の線をまっすぐにしてバランスの良い成長をするように」
「障害のある子どもが健常になる」

「背筋をまっすぐにして自律神経を整えられるように」

などなどのうたい文句を掲げて、乳児に独自の施術をしていた新潟県上越市のNPO法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」(解散)。

元理事長の姫川尚美容疑者(57)が、2014年に神戸市の生後4カ月の乳児を死亡させたとして、2015年3月4日、業務上過失致死容疑で大阪府警に逮捕されました。

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逮捕となったきっかけの事件は

生後4カ月の乳児へのマッサージのような施術を、うつぶせにした乳児を約45分間にわたり自らの太ももに乗せて、首の辺りを手で繰り返しもんだり、首をひねったりしたものです。

その後、乳児の体がぐったりとなってしまったので、病院へ搬送されましたが3月8日、脳症による多臓器不全のため乳児は死にいたりました。

乳児を死にいたらしめた乳児の体に良いと、数々のうたい文句を掲げた独自のマッサージ法は「ズンズン運動」(※1)と呼称されて、容疑者自らが提唱・施術と広げたものでした。

※1
容疑者のホームページより引用
『「ズンズン運動」仰向けにした乳児のそけい部、および、うつ伏せにした乳児の仙骨部に手を当ててリズミカルに揺らす運動。

大人が「ズン」と振動を与えると、これが「自律神経をつかさどる部分への刺激」となって乳児からの「ズン」と押し返すような自発的な動作が促されるとしており、乳児は精神的・肉体的にリラックスできる』

逮捕までの経緯

関係者によりますと、姫川容疑者は1992年ごろから上越市で幼児教室を開いていましたが、2000年ごろから「障害のある子どもが健常になる」「アトピー性皮膚炎に効く」などとして、同市内の自宅などで乳幼児に独自のマッサージを施すようになりました。

「ズンズン運動」「対面抱っこ」などと名付け、首をひねったり、もんだり、うつ伏せにして背中をなで上げたり、容疑者のオヘソと赤ちゃんオヘソを合わせるように抱っこして、揺さぶったりしていたといいます。

2003年にはNPO法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」を新潟県で設立、ここ数年は大阪や東京を中心に活動していました。

新聞記事によりますと、新潟県内では、2013年2月にも新潟市の当時1歳の乳児が姫川容疑者の施術を受けた後に死亡している経緯があります。

新潟県警は2013年11月、業務上過失致死容疑で新潟地検に書類送検をしましたが、2013年12月に不起訴処分となって事件にはなっていませんでした。

新潟県警幹部は、大阪府警による逮捕の報を受けて下記のようなコメントを発表しました。

「姫川容疑者は、過去にも施術を受けた乳児を死亡させたにもかかわらず、その後も同様の施術を続けていた。大阪府警は乳児が死ぬ危険性を認識していたと判断したのだろう」。

ネット上にも新聞紙上にも掲載されている写真は、マッサージとは名ばかりの、赤ちゃんの首を異常な角度にまでねじ曲げている異様な施術写真です。

抱っこをしながらの揺さぶりの写真もありましたが、後方に頭がガクンと垂れていて、これも異様です。

首は大動脈や呼吸器官や神経の集中している大事なところです。大人ですら、軽い衝撃でも鞭打ち症として治療が施されるほどの部分です。

施術どころか、子育てに不安なお母さんに付け込んで、「決して赤ちゃんやお母さんのためではなく、1回1万円という高額な施術金が手に入る、金儲けで行われた」ことであります。

その上さらに不幸なことに、「子育ての理論や情報に無知であった人が施術した」こと、と言われてもおかしくはない状況と考えられます。

上越市の自宅兼本部のほか、東京都と大阪府淀川区の両事務所などで6000人以上に施術したとされていますが、どうしてこのような事件が起こってしまったのでしょうか?

お母さんは子育て不安が多い。世にある子育てイベントの多くは「気になる!」

わが子をよりよく育てたい、お母さんはいつもそう思っています。

お母さんは時々育児に不安になります。ちゃんと育っているだろうか、育つだろうか……そしてお母さんは世にある子育てイベントの多くは「気になる!」と言います。

昔は地域や親族の関係が密でしたから、心配事があると地域の人に訊いたり、親族親戚にアドバイスをもらったりしました。どこかに通わせたいものであれば、通った人の意見や、近所の人に噂を訊いたり、自ら出かけていって現場の雰囲気を体感したものでした。

現在はネットでの情報収集が主となっています。

それらの情報を集めて決断は自分ひとりですることが多い様です。

子育て中のお母さんたちは「子供のために」と、さまざまなイベントを探して、良いのでは?と思って出向きます。

ネットでの育児方法紹介や子育てイベントを見つけ、これに良い!との書き込みがついていれば信用をしてしまうことも多いようです。

今回も「やればやる程、ずんずん運動が身体に与える影響を目の当たりにできます!」「ずんずん運動がすごくよかった!みるみる次女の顔色がよくなりました」といった感想もインターネット上に寄せられているとのことですが、しかし良く考えてみてください。

評判を上げるために、良い!との書き込みを入れる悪質さもPCの陰には隠れているのが現代です。

「この施術が良かった!わが子のアトピーが治った!」との書き込みは、頼めば誰にでも書き込んでもらえますし、PCを替えれば誰かに成りすまして、自分自身で書くこともできるでしょう。

赤ちゃんマッサージとは

今回の事件はマッサージでもなければ医療行為でもない、悪質極まりのないものですが、世の中には、良いセミナーも良いイベントもたくさんあります。

本来の赤ちゃんマッサージは、ポイントさえ理解していれば基本的に安全なものです。

専門的な知識や資格がなくても手軽にできます。あるいは赤ちゃんセラピスト、というような呼称で、育児を多方面に専門に行っている業者が受講期間を持ち、プログラムに沿って、その一部にマッサージを入れているということも有ります。

赤ちゃんに施すマッサージは、赤ちゃんを気持ちよく穏やかにするもので、母と子の遊び、触れ合い、スキンシップ、母子の愛情の深まり……そのようなものに基づいたものが赤ちゃんマッサージです。

お母さんの笑顔と赤ちゃんの嬉しそうな顔が付きものです。

決して泣き声などが有ってはなりません。

赤ちゃんマッサージは「育児技術のひとつ」あるいは「子どもとの楽しい触れ合いのひとつ」であって、お母さんが子どもに施すもので、事件の容疑者のように、免疫力を高めたりアトピー性皮膚炎に治ったりという、他者の医療行為では決してありません。

他者の医療行為である場合は厳しい免許制が取られています。

「ずんずん運動」をされて泣き叫ぶ赤ちゃん、その異常性

赤ちゃんの泣き声には理由があります。

不快、痛い、横を向きたい、お腹がすいた、オムツがぬれた、便秘でお腹が張る、寂しい、抱っこ、音が怖い、寒い、暑い、不安……泣くしか意志を伝えられない乳児は、理由が解消されるまで泣き続けます。

お母さんは子育ての状況を見て、原因を一つずつ排除していきます。

オムツを見て抱っこをしてみて、安心できるようにそっとゆらゆらしてみて、気分を変えるように外の風に当ててみたりします。消去法でいろいろやっていって、やっと赤ちゃんの笑顔か眠りに到達することができます。

消去法の一番最後が赤ちゃんの望んでいるものだったり、赤ちゃんの要求とお母さんの対処が一番初めにピッタリ一致したりする時もあります。それが乳幼児期の育児そのものなのです。

ご苦労様ですけれども、お母さんは暫くは赤ちゃんの要求を手探りで進むことになります。

しかし、赤ちゃんはほんとうにわかりやすく現金な一面も持ち合わせていて、要求と結果がピッタリ一致すれば穏やかな眠りに誘導されるか、元気いっぱいな時はすぐに笑ってくれます。

赤ちゃんが泣き叫び続けるのに、ズンズン運動の施術を続行されたということは、ですから、とても大変な事態であったということになります。

45分間も下を向かされたままにゆすられた赤ちゃんは、例え首が座った後だったにしても、心臓が圧迫され、うまく呼吸することができなくなるでしょう。

うまく呼吸が出来なくなれば脳に酸素が周らなくなり、意識は低下して低酸素脳症を起こさせ、多臓器不全で死亡に至ってしまうのは必定です。

「ズンズン運動」の中で行われた赤ちゃんへのマッサージは、母と子の楽しく嬉しい触れ合いのためのマッサージとは全くかけ離れているもので、まさしく死へのマッサージでした。

母子で行う触れ合いマッサージはとも角として、治療として施されるマッサージの場合は、医学的な根拠に基づき、専門的な訓練を受けた、医師や、按摩師、理学療法士(Physical Therapist略称PT)といった資格保持者しか施術できないと決められています。

さらに、医療的な効果を出すためには、より専門的な知識と技術が必要となります。

容疑者である施術者の自分勝手な方法と自分勝手な施術効果の根拠が、まるでオカルトのように感じられ、巻き込まれた母子が気の毒に思えます。

「赤ちゃんマッサージの安全性」と「お母さんの気持ち」

どのような事件でもそうですが、事件が明るみに出るといろいろな意見がでます。

今回も「このような危険なマッサージを受けさせる親も親ではないでしょうか」といった類の、親批判の意見も飛び交い、お母さんたちを混乱させていると思います。

ネットが発達してどのような情報も瞬時に手に入る現代では、その裏に隠された危険を掬い取って精査してくれる機能が失われていることも、あわせもっていることを肝に銘じる必要がありす。

子育てに悩んでいる時、あるいは今よりもっとステキな環境を子どもに与えてやりたいと思っているお母さん方は、多種多様な情報に振り回されてしまうこともありそうです。

自分の持っている子育ての悩みを訊くことが恥ずかしかったり、子育ての智恵を持っている祖父母との交流が面倒で絶たれていたり、情報があふれているので誰にも訊く必要が無いのだと思いこんでいたり、現代の育児が抱える難しさはいろいろあります。

それとは別に、今回のように「アトピー性皮膚炎が治る」などと言われれば、藁にもすがりたい気持ちで容疑者宅を訪ねたに違いない親の心情も理解できます。けれども、育児と医療行為を慎重に結び付けていかないと、事件に巻き込まれる可能性があるのが現代です。

科学的根拠に乏しい情報に踊らされることにないように、その育児サークルの、あるいは育児施術の知恵の出所がどこであるのか、行政は絡んでくれているのか、大きな育児専門の会社が永年に渡ってしっかりとした経営の中で主張されている子育て理論なのかが大事です。

親がしっかりと精査して理解することが必要であると思われます。

赤ちゃんはマッサージをされると、気持ちのいい時、痛い時、触ってほしくない部位などの反応をきちんと示します。

それらの反応をきちんと読み取って、無理をしない、母子ともに笑顔の中にいる、ことが安全な赤ちゃんマッサージの目安となるでしょう。

そして、マッサージは母と子との間か、または専門的な知識免許を持った者の間でしか行えないのが事実です。

ベビーマッサージのセラピストを養成する「日本コミュニケーション育児協会」(東京)の滝田加奈子代表は「ベビーマッサージの目的は、親子間のスキンシップ。セラピストが直接乳児に触れることはない」と説明しています。

「日本小児障がいマッサージ普及協会」(愛知)の青山かほる会長は「意思疎通できない乳児の治療は高度な知識が必要。成人との違いをしっかり把握しなければいけない」と話されています。

マッサージの対象が乳児であるだけに安全の確保は第一です。例え治療や療養目的でマッサージをする場合でも、専門的な訓練を受けた、医師や、按摩師、指圧師、理学療法士などが慎重に施術を行います。

幼気(いたいけな)子どもたちが、注意をすれば命を守れたであろうに、さまざまな事件に巻き込まれることの無いように、私たち保育関係者や両親や、周囲の大人たちは気をつけなければなりません。

亡くなられた赤ちゃんのご冥福を祈ります。

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